統合報告書の作成検討が始まった

グローバルな上場企業を中心に取組が始まった統合報告書について考えます。

この内容は。METI報道発表その他の公開資料と企業行動課からのお話を元に記述しています。各種資料リンクをご参照の上、最新情報等にはご注意ください。

 

1.統合報告書とは

 欧州を中心に上場企業が投資家からの要請が強まっている「財務内容の報告」と企業の持続可能性や知的財産を含む活動報告及び見通し(非財務情報)をリンクさせることを実現するために、IRレポートに簡潔明瞭な非財務情報を記述してCSRレポート等との関係を明確にするために提案されたものです。

 

2.どのように検討されているのか 

IIRCという国際機関のガイドラインが2011年秋に提示された。 

 2011年にパブリックコメントが終了し、その内容を公開している。

 2012年から具体的企業の実際の統合報告を試行する中で決定される予定。

実際は、当初より遅れて、今後1年半後(H25年中)に成立を目指すとされている。(H24年 6月末)

 

(1)日本での対応関係機関は、経済産業省、金融庁、環境省、公認会計士協会、東京証券取引所

2011年秋にIIRCラウンドテーブルが東京、大阪で開催された

 

(2)進捗状況と論点。

① アニュアルレポートの財務報告に対して、CSRレポートなどの非財務報をどうリンクさせるかを長期投資家の要求情報として議論されている。

 

② 欧州発の発想で、米国はグローバル企業が関心を持つが、日本企業はこれから(試行された統合報告書は単に「一冊ににしただけ」との批判も多い)。

 

③ CSRレポートは不要との誤解を持たないこと(確かにガイドライン案には企業の各種報告書が増える一方で、それらを合理化するメリットを唱っているが、投資家の要求する趣旨は、企業の中長期ビジョンやビジネスモデル、無形資産や自然資本に対する影響リスクなどを財務情報と関係付けて説明することです。)

 

④ 統合報告書は数値の裏づけ情報をリンクしたいため、簡潔でわかりやすい記述要求項目を設定している。

 

⑤ しかし、非財務情報の要求項目に対する記述の仕方を標準化することは、かなりの困難が予想されるため、期限が延長され、実証的試行的な取組を元に進められることになった。

 

 なお、金融庁などが大きく前面に出てこない理由は、有価証券報告書のように義務化されるという誤解を生まないため。(南アフリカ義務化、EU,米国は義務化指向)

 

詳細な情報源は、リンク集及び雑誌 企業会計2012Vol.54No.6 特集をご参照ください。

 

 

 

日本企業の対応上の効果影響予測

 

 統合報告書が義務化されればアニュアルレポートを出していない企業も有価証券報告書とは別に作成開示することが必要となり発行企業の数は増加すると考えられます。

 

 義務化がない場合でも、グローバル企業は統合化に進み、それ以外の企業ではCSR報告書を独立維持するかはまだ見通せません。(CSRにはそれなりの歴史と根拠があるため。)CSRレポートのガイドラインを作ってきたGRIという機関がG4という改定案を公表しており、これが核となり試行の結果を踏まえ、多くのガイドライン作成企業もその中身尾反映させる流れにあるものと考えられています。

 

 事例の武田製薬は元々アニュアルレポートに多くの企業責任等のCSR要素を中心に記載してきたために、CSRレポートを独立レポートとして作成してみたものの重複内容が多いことから、統合報告を優先する流れに沿っていった経緯があります。(上記雑誌に記載有)

 

3.環境報告書/CSRレポートの印刷物として環境配慮動向

 エコ印刷研究会がエコ印刷大賞、ベンチマークを実施しています。(20072011年版の分析データ、毎年200刷以上。)

 IRレポートのベンチマークレポート(2007・2009)はCSRレポートとの関係で簡略化した内容で報告していますが、現業も大きな乖離はないと見てよいと判断しています。

 

 ご興味ある方は是非ご参照ください。

 

●経済産業省 発表資料

http://www.meti.go.jp/press/2011/12/20111207001/20111207001.html

 

●サステナビリティ日本フォーラム

http://www.sustainability-fj.org/index.html

 

●東京証券取引所 

http://www.tse.or.jp/news/09/111206_a.html

 

●公認会計士協会

http://www.hp.jicpa.or.jp/specialized_field/iirc.html

 

 ↑仮訳)統合報告に向けて 21 世紀における価値の伝達 日本公認会計士協会がIIRC の許可のもと作成・公表

のダウンロードリンクあり

 

KPMGあずさサステナビリティ 国際統合報告委員会(IIRC)による統合報告のディスカッションペーパー

http://sus.kpmg.or.jp/knowledge/newsletter/201110.html

 

●オルタナ記事 世界の「統合報告書」をリードする「ノボノルディスク」社――下田屋毅の欧州CSR最前線(13)在ロンドンCSRコンサルタント・下田屋毅氏

http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20120606-00000301-alterna-soci

 

IIRC, Towards Integrated Reporting: Communicating http://www.discussionpaper2011.theiirc.org/

 

 

●武田製薬統合報告書

http://www.takeda.co.jp/csr/reports/article_1025.html

 

 

(2012年9月14日)